2008/05/28

乙一『GOTH』


乙一氏作、『GOTH』読了。
これはなかなかライトな読み口……というか、ものすごくライトノベルっぽいんじゃないかと思いながら読んでました。いや、ライトノベルをあまり読んだことがないので言い切れるものではないのですけれど。

主人公の「僕」とその女友達である森野を中心に、彼らが住む町周辺で起こる猟奇殺人や奇妙な事件にまつわる冒険を描いたオムニバス形式のストーリーです。
あとがきに書いてあったのですが、短編として書かれた作品に登場した二人のキャラクターが気に入ってシリーズ化したとのこと。
サイコホラーとしてなかなか面白いです。今回は特殊能力者とか出てこないんだけど、それでもハリウッド映画化の話があるらしい。まあ、映像化したらものすごくグチャグチャになりそうでちょっと僕は見れないかもしれないけど。アナザヘヴンぐらいの、ギリギリな感じにしてもらえば大丈夫かな。

これ読んでたらなんとなく昔2chのオカルト板で流行った“師匠シリーズ”を思い出した。(このサイトの左フレーム、『シリーズ』→『師匠』で読めます。一応、怖い話なので苦手な人は注意)
こちらは掲示板への書き込みなのでほんとに単発のエピソード集という感じなのですが、登場人物たちがなかなかアニメチックで面白い。漫画化して青年誌あたりで連載したらいいのにと思って読んでました。

GOTHは「せつない系乙一」では無く、人物像の執拗なまでの描き込みと猟奇というJoJo系作品です。その上ヒロインの森野さんは無表情キャラでなかなか良いです。総合して、自分としてはなかなか高評価です。
続編読みたい。無理に書いて陳腐化するのはいけないけど、ネタがあったら書いて欲しいなあ。

2008/05/15

アナログなテレビ

もうかなりテレビのデジタル化が進んでますね。大抵の場所でワンセグの電波入るし、地元のケーブルテレビもデジタルの電波を配信しているので、デジタル放送を受信できる機械を買ってくれば地デジでテレビを見ることができる環境が整いつつあります。
確かに、これなら2011年にアナログの電波を止めても大丈夫そうだなあというペースであるような気がする。

で、なんとなくパソコン用の地デジチューナーを探していたら
アナログテレビ用の地上デジタルチューナーというものをネットで見つけて、ちょっと欲しいなと思った。
これをアナログのテレビにつけると、地デジ対応になるというもの。
もちろんブラウン管が横に伸びるわけじゃないし、元々のテレビの性能以上になるわけじゃないんですけどね。
だけど本当ならアナログテレビはせいぜい『レトロゲーム専用モニター』に成り下がってしまうところを、2011年以降もテレビとして使えるというわけ。

まあこんなものをゴチャゴチャつけるぐらいなら、これの値段にあと2~3万足して地デジ対応液晶テレビを買ったほうがいいよって言われますね。僕もそう思う。

でも古めのテレビを使ってたら、それはそれでかっこいい気がするんだよね。世の中みんな液晶テレビなのにブラウン管テレビ使ってたら逆におしゃれっぽいじゃないですか。
あと何年かしたら、真空管マニアみたいな感じでブラウン管マニアが出てきて、「やっぱりブラウン管は発色がやわらかくていい」とかわけのわからん論評をし始めるんじゃないかとにらんでます。

2008/05/12

乙一『暗いところで待ち合わせ』


乙一氏作、『暗いところで待ち合わせ』読了。
いい加減飽きないのかと言われそうなほどの乙一作品追いかけ月間が続いています。多分あと3、4冊あるのでもういっそ一通り読んでしまおうかと思ってます。

これは、逃亡中の殺人事件容疑者が盲目の女性の家に身を隠すというお話です。
事故で視力を失ったミチルは、家の中でひたすら静かに暮らしています。そこで警察から逃れたアキヒロが、部屋の隅で音を立てないようにして潜んでいるのです。
同じ部屋にいて、見えるところに居ながら隠れている、というのはとてもスリリングでした。
二人のそれまでの人生が交互に描かれていき、殺伐としてしまいそうな状況も穏やかな雰囲気になっています。

これまで読んできた同氏の作品は、「これはちょっとひねりすぎだろ」と思うほどトリッキーな仕掛けがしてあることが多いように感じたのですが、この作品は落ち着いた感じですごく良かったです。
なんかねぇ、少し弱い登場人物たちがちょっとだけ前に進もうとかそういうのです。じんわり来ます。

2008/05/10

恩田陸『夜のピクニック』

恩田陸さん作、『夜のピクニック』読了。

ある高校で毎年行われる「歩行会」というイベントに参加する生徒達の姿を描いた作品です。
恋愛や進学などについて語り合いながら夜通し歩いていくのですが、お互い理由があって話す事のできない主人公の融と貴子の関係性が、ゆっくりと変化していく様をじっくり楽しむ事ができました。

それぞれの登場人物の人間性、その会話が自然でとても読みやすい。考え方とそれを表現する言葉、それを受け取った人の考え・・・という流れが愉しいのです。
なんか久しぶりに純文学を読みました。

学校のイベントに文句を言いながら全員で参加していくという状況、いまでは体験しようがないんだけどなんだかいいなあと思った。
学生時代を懐かしく思い出したりもしました。すごくいい作品だと思います。

2008/05/08

乙一『死にぞこないの青』


乙一氏作、『死にぞこないの青』読了。

主人公のマサオは小学五年生で、ちょっとニブくて引っ込み思案な他は特に特徴のない少年。
ある日新任の爽やかな先生が担任になり、喜ぶのもつかの間、その先生はクラスをまとめるためにマサオを徹底的にいじめ始める……

えげつないイジメが淡々と語られて行きます。ストレスをためてためて、終盤のクライマックスへと向かって行きます。わかりやすい感動や恐怖はあんまり無い、今まで読んできた乙一作品としては比較的地味な物語であるとは思いますが、なかなか楽しめました。

マサオ達が遊ぶ場面では、ビックリマンシールやコロコロコミックが出てきたり、田んぼでカブトエビを見つけるシーンがあったりしてなんだかすごく懐かしい気分になりました。
いじめられ、怒りを押し殺した結果現れたマサオの見る幻覚の少年『アオ』は、あいかわらずスタンドっぽかったです。現れたり消えたりするところとか、喋ってる雰囲気とか。
落ちはほっとする感じで、面白かったな、という感じで読み終えました。


ゴールデンウイークのおかげでなんとかいろいろとこなせてきた気がします。
読みたい本として待ち状態になっているのはあと20冊くらいかなあ……本屋に行かないようにしないと、減りそうにないな……むしろ増えていくんだ。まあいっか。

2008/05/06

安っぽい宝の地図

ソフト屋の仕事シリーズ。
その1
その2

ソフト屋のお仕事として、作るものが決まったら次は設計を始めます。
何をするかっていうと、そのものズバリ『設計図』を作ります。

プログラミングって結構自由なんです。シンプルなモノを作ったとしても10人が作ると10通りのプログラムが出てくるぐらい、同じゴールに辿り着くための道筋が多い。
例えてみるとレゴブロックみたいなものだろうか。「船作れ」って言われて、大きめのレゴにちっさい突起をプチっとくっつけて「出来た!」っていう人もいれば、物凄い精密で巨大な物を作り上げる人もいる。そんな雰囲気です。
この“適当に作っていってもいつか完成する”っていう自由さは凄く魅力的なんだけど、あまり無計画につくりはじめると大変なことになります。
船の前側を作って、飽きたから後ろ側を作って、くっつけようとしたらサイズが合わないから前側を作り直すとか。これが大人数で作るものだったりしたら、個人個人が自由にやってると永遠に終わらなくなってしまう。

というわけで設計図いらなそうなプログラミングでも一応設計図を書いてからやれ、と言われてます。

しかし、ある程度の図を書いても、プラモの設計図みたいに完全に組み立て方を説明するようなものは書けません。せいぜい「あー、こんなイメージね」というレベルの強制力しかないような図しか作れない。
強制力を持たせるために細かく書き込んでいくと、もうそこまで考えるならプログラム書いたほうが早いってなるし。

だから設計図書けといわれるけど正直めんどい。いつもテキトーです。どれぐらい適当かというと……

「今度のアレ、どういう感じに作ります?」
「うーん、Aパーツはセンサーとマニピュレータ、Bパーツは足の動きね。そんで通信のフォーマット共通にしといて、コアファイターにデータ送るようにしとけばいいよ。あとはコアファイターで入力したデータをおんなじフォーマットで送り返せば多分動くからさ」
「あー、それいいっすね。変な拡張パーツ付けろって言われた時も対応楽そうだし」


多分、どこもこんな感じだと思うんだけど……みんなもっとマジメに設計してるんかなあ。
今考えてみると、図工の授業なんかで粘土細工を作るときなんかも、一度落書きでもいいから完成イメージを書いてから作ろうっていう感じに教えてくれたらよかったのに。

2008/05/04

乙一『きみにしか聞こえない』


乙一氏作『きみにしか聞こえない - Callinng You』読了。
表題作のほか、『傷-KIZ/KIDS-』『華歌』の2編が収録されていました。

『Callinng You』は人付き合いが苦手な女子高生が主人公の、切ない、恋愛未満といった感じのストーリーでした。
頭の中でつくりあげた想像上の携帯電話が、同じように寂しさを紛らわせようと携帯電話を想像していた男の子とつながってしまうというちょっと変わった始まりで、その空想上の電話を使って段々と打ち解けていく様子が瑞々しく描かれています。
クライマックスのシーンはあいかわらずうなってしまうような盛り上がりです。若い女の子が読んだらかなりの割合で泣くんじゃあないだろうか。多分。

『傷』は養護学級にいる少年二人組みのお話。
一人は手のつけられない乱暴者で、彼の視点で物語が進んでいきます。もう一人はおとなしくてやさしい少年で、「怪我を他人から自分の体に移動させる、または自分から他人に移動させる」というスタンド能力を持っています。
変わった力を見つけた二人が、お互いの境遇に苦しみながらも楽しく遊びまわるのですが、その楽しい描写が後半の絶望的な状況のなかで思い出されて胸がいたむようです。
なんなんだこの泣かせ芸的文章。シンプルなストーリー運びなんだけどいつもながら巧いなと思います。

『きみにしか…』と『傷』は両方とも映画化されているみたいです。ショートストーリーを原作にするとどんな感じになるのだろう?機会があったら見てみたいな。

『華歌』は事故で恋人を失った主人公が、病院で過ごす姿を描いた作品です。
人の顔を持つ歌う花が出てくるんだけど、読んでいてなんだか気持ち悪く思えるほどなまなましい描写でした。恐怖モノではないんだけど、ホラーっぽい。ストーリー上、その花は悪いものではなくて、登場人物たちがその花によって段々と救われていくという内容なんですけどね。
始めは薄暗い雰囲気の病室とその患者たち、という感じで鬱なのですが、段々と明るくなっていく様子は結構楽しく読めました。


短編集はなんだか読みやすい。読書メモの方が追いつかないや。

2008/05/02

グインサーガ120『旅立つマリニア』

119巻でグインが衝撃の修理&メモリ修正を受けてしまった長編ファンタジー風ロボストーリーの最新刊。

フロリーさんが出納めになりそうなので、彼女に焦点をあてたお話でした。
リンダとフロリーのやりとりはなかなか面白かったです。しかしヴァレリウスが出てくると非常にグダグダな感じになるのはどうにかならないものだろうか。120巻というのは尋常じゃあない世界だと思うんだけど、キャラが一人歩きしすぎてしまっていて全くストーリーとしてまとめようという努力が見えない気がする。
作者さん大病して療養中らしいのですが、10年も20年も読者をやっている人たちはぶっちゃけ「ちゃんと終わらせてくれ」と祈っていることでしょう。

うーん、毒っぽい感想になってしまった(笑)まあタイス編は結構面白かったし、おおきな波のある物語なので、舞台が移って次のお話が盛り上がってくるのを楽しみにします。

2008/05/01

乙一『暗黒童話』

乙一氏作、『暗黒童話』読了。
初の長編というか、文庫1冊分の量の作品だったようです。

内容はかなり猟奇的なホラーなので、苦手な人にはちょっとキツイかもしれません。しかしその辺大丈夫なら逆にすごくお勧めです。

かなりエグイ感じの猟奇殺人犯(?)が敵として登場します。この人がある特殊な能力を持っていて、それに対する女子高生の主人公も、ちょっとした不思議な力を持っています。
これらが絡み合って物語が展開していくわけですが、これ、もうJoJo4部っぽいんだよね。杜王町が舞台でも全然おかしくない感じがする。
喫茶店や洋館などのシーンの描写が細かくて映像的に楽しめます。終盤の盛り上がりも乙一氏ならではのトリックとたたみかけで良い感じでした。

ホラーのわりに爽やかな読後感です。面白かった。